外食産業の発展とともに、サービス産業全体の社会的評価も、著しく向上しました。
ここでいう産業とは、国民生活になんらかのかたちで寄与する仕事、国民生活に欠かせない仕事ということです。
こうした面からも、サービス産業に従事する私たちの意識の持ち方は、大きな意味を持ってくるのです。
では、なぜ、外食産業はこんなにも急成長を遂げたのでしょうか。
まず第一に、収入の増加による経済的余裕。
第2に余暇の増大により、週末は内食から外食へと食生活のスタイルが変化しました。
例えば、ファミリーレストランの平日と週末の売上格差を見てみると、ほぼ2倍から3倍の開きがあります。
第3に、女性の社会進出。
かって昭和52〜55年ごろは、ファミリーレストランの最大のライバルは、ほかならぬ家庭の主婦だったのです。
第4には交通機関の発達による物流の充実、第5にはこれと関連して、地方都市の発展が挙げられます。
交通機関の発達は、福岡や仙台、金沢といった地方都市におけるビジネスチャンスの増大をもたらし、マーケットが拡大しました。
そして最後に、戦後世代の台頭です。
今や、全人口の65%以上が戦後〜1945(昭和20)年以降〜生まれになりました。
その結果、団塊の世代に向けたマーケット戦略を打ち出したファストフード、ならこのように、私たちの産業もそれを取り巻く環境も大きく変化したのですが、一体、どれだけの企業が、そしてそこで働く人たちが、こうした時代の変化に気付いているこの変化に気付いているかいないかで、働く人たちの個人差はもちろんのこと、大きな企業間格差すら生じるのです。
それどころか、こうした変化に気付いて意識を転換させた企業や人たちだけが、これからの厳しいマーケットを生き抜いていけるのでしょう。
ファミリーレストランなどは、大きな成功を収めました。
こうした人口動態的な要素と外食産業の動きには、密接な関連があるのです。
例えば、まだまだ多くの企業やサービス産業に携わる人たちが、自分たちの仕事を単なる客商売、水商売と意識しています。
そして、社会的意義などは考えず、その日でしょうか。
それなのに、まだニ十数年前の古い意識のままという企業や人が、なんと多いことそれには、正社員だけでなくパートやアルバイトであっても、きちんとした教育・訓練を受けるプログラムが必要です。
なぜならば、産業人としての自覚、意識をきちんと持った人材の育成が何よりも重要なものだからです。
暮らしの行き当たりばったりの状況を続けています。
汗を流して身体を動かすのはいいのですが、明確な目標がなく、計画性がありません。
教育や訓練などより、仕事は盗んで覚えろ、先輩の後ろ姿を見て身体で覚えろなどと、昔の意識をそのまま引きずっている例がまま見られます。
しかし、サービス産業およびそれを取り巻く環境がガラリと変わった現在、私たちが持つべき意識は、かつてとは全く異なった新しいものでなければなりません。
まず、私たちの仕事は一つの確立された立派な産業なのですから、産業人としての自覚をきちんと持たなければなりません。
しっかりと私たちの仕事の社会的な意義や明確な目標を把握することです。
また、サービス産業で働く人間が他の人に与える影響がいかに大きなものかを、よく肝に銘じておくことです。
まず、古い意識では、まさに「お客さまは神様」です。
お客さまが主で、働く皆さんは従という縦の関係です。
そのため、お客さまとの間に壁ができ、働く皆さんの側に変なかたちでのコンプレックスができてしまいます。
その結果、お客さまの前ではペコペコしてこびているのに、お客さまがお帰りになると「なんだ、今の客は」などと言ったりします。
また、心や気持ちより、まず形からサービスに入ります。
そして例えば、お水を注ぐのは右からか左からかというようなことばかりを問題にするのです。
そのため、サービスというより作業になっています。
現在あるべき意識ではまず、サービスは形ではなく心、気持ちから入ります。
そして、お客さまと私たちの関係は縦ではなく、あくまでも横の関係です。
お客さまと私たちはイコール、同じレベルということです。
それでは、サービス面を中心に、古い意識と現在のあるべき意識を比較してみます。
オープンキッチンならば、できたてのお料理のにおい、そこで生き生きと働く人々の動きがダイレクトに伝わってくるからです。
中でもイタリア料理のイルポッカローネのチーズリゾットは、真ん中をくり抜いた、ひと抱えもあるような大きなパルメザンチーズの中に、リゾットを入れてチーズ事実、私もある日のこと、帰りがけの親子のこんな会話を耳にしました。
「お父さん、今日はとっても楽しかったね。
ウエイターのお兄さんが、今度は一緒にダンスしようねって、約束してくれたんだ。
だから、また連れて来てよ」と。
これなど、まさに従業員が積極的にお客さまの中に入り、その心をキャッチする動のサービス、攻めのサービスの例です。
そのほかにも、人気があるレストランを見ると、オープンキッチンのレストランが圧倒的に多いのです。
また古い意識では、サービスは待ちあるいは静の姿勢です。
よく見かけるのは、従業員がレジやサービスステーションに固まって、ぺちゃくちゃおしゃべりばかり。
自らすすんでお客さまの中に入っていくのではなく、典型的な、お客さまに呼ばれるまでは待っていようという姿勢なのです。
現在あるべき意識では、積極的にお客さまの中に入っていく攻めのサービス動のサービスが重要になっています。
なぜなら、今、外食されるお客さまが求めているのは、家庭では味わえない豊かさ、温かさ、興奮、感動といったエンターテインメントの世界だからです。
例えば、従業員自らが企画して歌ったり踊ったりしてお客さまを楽しませる、1940年代の大リーグをテーマにした東京ドームのレストラン、ベースボールカフェが評判です。
ここでは、毎晩、7時と8時30分の2回、従業員全員が仕事の手をちょっと休めてダンスや歌などのエンターテインメントを披露し、それが大ヒットしています。
ところで、意識の変革が必要なのは、何もサービス面だけに限ったことではありません。
今や、調理の世界においても必要不可欠なのです。
今から十数年前は腕がいいという技術、あるいは技量が買われていた時代でした。
しかし、今日においては機械設備の著しい進歩と食材の開発が進み、ただ単においしいお料理をつくるという技術だけでは優秀な料理人とはいえなくなってきました。
厨房内の部下の教育・訓練を通じて人材の育成ができる力、また飲食原価管理の能力などが求められています。
マネジメント能力のない料理人は通用しない時代になってきているのです。
調理の世界にも、時代の変化に伴う意識改革が要求されています。
これほどまでに成長したサービス産業ですが、あらゆる産業が価格構造の変化に見まわれたように、バブル経済崩壊の波をまともに受けました。
順調に右肩上がりで成長を続けてきたサービス産業も他産業同様、需要が縮小してしまったのです。
これまでの成長期には、黙っていてもお客さまは来てくださいました。
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